主な登場人物

主人公「みさき」 若いというよりも幼い印象の女性。しっかりものの夫に守られすぎてきたために世間知らず。
主人公の夫「新時」 教師。主人公よりも年上でいつも落ち着いている優しい男性。
夫の双子の弟「盛時」 兄とはずっと音信不通であった。兄と見た目はそっくりだが、性格や立ち振舞いは粗暴。

小説「ほろびぬ姫」のポイント

主人公の一人称視点で話が進んでいくのだが、夫の呼び方は「あなた」。その双子の弟の呼び方も「あなた」であるのが独特な小説、

物語の冒頭は、夫が自分にそっくりな弟とともに現れるシーンから始まり、そのときはまるで主人公の混乱を共有するかのように読者も何がなんだか分からない気持ちになる。

どのあなたが夫でどのあなたが弟なのだ、と。

でも、物語が進むにつれ、「あなた」は明確に分かるようになる。

その文章の巧みさには思わず感心してしまうし、この不思議な「あなた」まみれの文章がどうにもツボに入る。好きだ。

小説「ほろびぬ姫」のあらすじ

夫がなぜいきなり音信不通だった双子の弟を主人公の前に連れてきたかというと、「病気により余命が短い」から。

つまり、自分の代わりに双子の弟を連れてきたのだという。

もちろん、主人公にとっては夫の病気の報告も、弟の出現もあまりに突然すぎて理解が追いつかない。

しかし、これまで過保護というまでに守られてきた夫の手を離れ、少しずつ状況を理解し、同時に弟との接点も増えていき……。

最終的にどんな選択肢を彼ら3人はするのか。

小説「ほろびぬ姫」のネタバレ(クリックで開閉)

ネタバレ
愛する人を失うとき、どう思うか、どう行動するか。

愛する人をおいていくとき、どう思うか、どう行動するか。

私は結婚していた当時、主人公のみさきのようだった。

年上のしっかり者の旦那に保護され、衣食住のなんの心配もせず、なにも考えずいられた。

それだけに夫の新時の行動はよく分かる。自分がいなくなったら何もできないに違いないと思うだろうし、そうあってほしいと思うだろう。

でも、その反面、私はみさきのこともよくわかる。

人はしたたかだ。どれほど大切な人を失ったとしても、人は生きていける。

なんとかなってしまうものなことを知っている。

そのうえで自分がみさきだったらどうするか。きっと愛する人の理想を演じきるだろう。

自分が新時だったらどうするか。命を失う直前の気持ちは想像しきれないけれど、やっぱり愛する人の理想を演じるように思う。

そう思うと、愛とはやはりエゴなのかもしれない。と考えさせられた作品であった。